使わなくなった客室が、最先端の農場へ。「植物工場プロジェクト」始動までの全記録

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なぜ、リゾートホテルが「野菜」を作るのか。

私たちファーム班(農作物生産班)が、昨年9月に始動させた「植物工場プロジェクト」。 使わなくなった客室をリノベーションして農場にする——。この一見奇抜なアイデアの裏には、沖縄という土地が抱える切実な課題と、それを解決したいという私たちの強い意志があります。

1. 「野菜がない」沖縄の脆弱性を乗り越える

沖縄県は、台風などの気象条件や高温多湿な気候により、葉物野菜の生産が非常に難しい地域です。特にレタス類に関しては、「沖縄産」は市場にほぼ出回っていません。

現状、その多くを本土からの輸送に頼っていますが、世界情勢による燃料高騰や、台風による船の欠航など、外部環境の変化がダイレクトに価格や供給量に跳ね返ってきます。 「必要な時に、新鮮な野菜が手に入らない」。 このリスクを解消し、通年で安定した野菜を供給するためには、天候に左右されない屋内型の植物工場が不可欠でした。

2. 一般流通しない「オランダ産プレミアムレタス」

私たちが生産するのは、日本のスーパーでよく見かけるレタスではありません。 採用したのは、オランダ産の「プレミアムレタス」品種です。

シャキシャキとした食感と苦味がない深い味わいが特徴ですが、国内では希少なこの品種を、私たちは通年で、しかも安定的に供給する体制を整えました。さらに、料理の彩りに欠かせない「マイクロリーフ」も同時に生産しています。 リゾートのシェフが求めるクオリティを、いつでも畑(工場)から厨房へ。これこそが、私たちが目指す真の「地産地消」です。

3. 沖縄発!OISTに本社を置く「カルティベラ社」との技術提携

このプロジェクトを実現するために、私たちは世界最高水準の研究機関であるOIST(沖縄科学技術大学院大学)に本社を置く、株式会社CULTIVERA(カルティベラ)と提携しました。

同社が保有する特許技術「モイスカルチャー(湿気耕栽培)」を採用した植物工場の導入は、沖縄県内で初の事例となります。

  • 圧倒的な美味しさ: 根を水に浸すのではなく、湿気(ミスト)で育てることで植物に適度なストレスを与え、野菜本来の糖度と旨味を爆発的に引き出します。
  • 完全無農薬: 閉鎖されたクリーンな環境で作るため、農薬を使う必要がありません。

「安心・安全」な素材を、リゾート内で生産し、リゾート内のレストランでお客様に提供する。 沖縄初となるこの技術で、生産から消費までをカヌチャ内で完結させる「リゾート型6次産業化」のモデルケースがいよいよ動き出しました。


客室が最先端ファームに変わるまで。工事の全記録

では、実際にどのようにしてホテルの客室が植物工場へと生まれ変わったのか。 昨年9月の稼働に向け、リゾートの片隅で密かに進められていた工事の全貌を公開します。

① すべてはここから始まった。(工事前)

プロジェクトの舞台となったのは、以前はスタッフの休憩室や倉庫として使われていた、旧タイプの客室です。

窓の外にはカヌチャの緑が広がっていますが、室内はご覧の通り、少し寂れた雰囲気が漂っていました。 ここから、本当に最先端の植物工場が生まれるのか? 期待と不安が入り混じる中、プロジェクトは動き出しました。

【写真:工事前の客室(使わなくなった部屋の様子)】

② 客室を「ハコ」に戻す。(1次工事)

最初に行われたのは、徹底的な解体作業です。 カーペットを剥がし、壁紙を取り払い、不要な設備をすべて撤去していきます。

リゾートの華やかな雰囲気とは対照的な、埃と熱気に包まれた現場。 しかし、ここでの丁寧な作業が、後に精密なシステムを稼働させるための重要な土台となります。徐々に部屋がコンクリートむき出しの「ハコ」へと姿を変えていきました。

【写真:1次工事中の様子】

③ 命を吹き込むシステム構築。(システム工事)

「ハコ」ができあがると、いよいよ心臓部となるシステムの搬入です。

通常の水耕栽培とは異なる、特殊な栽培棚が運び込まれます。 配管が張り巡らされ、植物の成長に欠かせない専用のLED照明が設置されていく様子は、まさに「秘密基地」が組み上がっていくような高揚感がありました。

緻密な計算に基づいて配置された機材たちが、ここで新たな命を育む準備を整えていきます。

【写真:資材到着】

【写真:みんなで組み立て】

出来上がってきましたね!

これから工場を仕切る宮城班長。マイクロの種子撒きです。


【まとめ】そして、昨年9月。始動の時。

数ヶ月にわたる工事を経て、昨年9月、ついに植物工場は稼働を開始しました。

かつて客室だった場所で、LEDの光を浴びて野菜の苗が並ぶ光景は、感動的ですらあります。 現在、ここではモイスカルチャー農法による高糖度トマトや葉物野菜の試験栽培が順調に進んでいます。

リゾートの空き部屋が、食の未来をつくる最前線基地へ。 ファーム班の新たな挑戦は、まだ始まったばかりです。

次回の記事では、いよいよこの工場で採用された「モイスカルチャー」の秘密に迫ります。どうぞお楽しみに!

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